ノックアウトマウスについて

http://bunseiserver.pharm.hokudai.ac.jp/gihou/knockout.html

2007年のノベール医学・生理学賞はノックアウトマウスの作製法を考案したMario R. Capecchi, Martin J. Evans and Oliver Smithiesの3氏に授与された。
http://nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2007/press.html

ノックアウトマウスの歴史は1980年代からか
 マウスのES細胞が分離されたのが1980年代だからそうのだろう。
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/stem/comment1.htmlを見ると、1990年代初めには先端の研究者にも「ノックアウトマウス」っていうやつがあるらしいよ っていうくらいにしか知られていなかったのだろうか。

http://www.ibri-kobe.org/trc/cont/00_www/basics/explanation/06_08.htmlより

ES細胞は、体のどの部分にでもなることができます。キメラマウスの生殖細胞精子卵子)になって、胚性幹細胞のDNAを子孫に伝えることもできます。この場合、キメラマウスとふつうのマウスの間にできた子は、胚性幹細胞由来のDNAを半分もつことになります。胚性幹細胞のDNAに壊れて働かない遺伝子があれば、それが伝わっているかもしれません。じつはこの原理を利用して、ノックアウト・マウスがつくられています。とくていの遺伝子をはたらかないようにしたものがノックアウト・マウスで、遺伝子の役割をしらべるのに大変役に立っています。

胚性幹細胞はここでも大きな役割をはたしています。ノックアウト・マウスをつくるには、とくていの遺伝子をねらって壊さなくてはならないのですが、これは簡単ではありません。ゴルフでホールインワンをねらうようなものなので、めったに成功しないのです。こうなると「へたな鉄砲も数うちゃ当たる」式でやるしかありませんが、それにはたくさんの細胞をつかわなくてはなりません。つまり、たくさんの細胞に同じ操作をして、運良くねらった遺伝子が壊れたものを選び出すしかないのです。このとき、いくらでもふやすことができる胚性幹細胞が役に立つわけです。

目的の遺伝子が壊れた胚性幹細胞ができたら、それをふつうのマウスの胚に入れてキメラマウスをつくります。このキメラマウスをふつうのマウスと交配させます。こうしてできた子の中には、壊れた遺伝子が入っているものがいるはずです。ただし、相同染色体の一方には、まだ正常な遺伝子が残っています。そこで今度は、この壊れた遺伝子をもつ子同士を交配させます。するとここで生まれた子には、2つの相同染色体のどちらにも壊れた遺伝子が入ったマウスもいるというわけです。これがノックアウト・マウスです。
こうした技術はバイオテクノロジーと呼ばれています。バイオテクノロジーによって、生物学は急速に進歩してきたわけです。

ES細胞で狙った遺伝子を壊す
2 この「ある部分の遺伝子を壊した」ES細胞をマウスの胚に入れる
3 生まれてきたキメラマウスとふつうのマウスを交配させる
4 これだけではwildとmutantのalleleを一本ずつもったマウスしかいないので、さらにこれらを交配させると、その子らは1/4の確率でmutantのhomoになるはず!

ノックアウトマウスを作るためにキメラマウスとES細胞が必要であるのはなぜか?
 http://oshiete1.goo.ne.jp/qa2389383.htmlより

ノックアウトは、狙った遺伝子と相同なDNAの内部を、その遺伝子の機能を失わせるような配列と入れ替えたものを導入して、ゲノム上の遺伝子と相同組換えさせて作ります。

ゲノムのどこに挿入されてもかまわない遺伝子導入なら受精卵に注射しても出来ます(というかそうします)。しかし、相同組換えでうまいこと導入したDNAがゲノム上の標的遺伝子と入れ替わったものが出てくる確率は低いので、受精卵に注射してノックアウトをとるのは困難です。

そこでES細胞が必要になってきます。培養細胞ですのでトランスフェクションの技術でいっぺんに多数の細胞に遺伝子導入できます。薬剤耐性マーカなどを利用して遺伝子導入が成功した細胞を単離培養し、さらに標的遺伝子がデザイン通りにノックアウトされている細胞をサザン解析やPCRで選び出します。だいたい100クローン以上調べるとそういうのが取れてきます。

細胞をノックアウトしただけではマウスにはなりませんから、当たりのES細胞をほかの系統のマウス(ES細胞の由来が黒毛なら白毛のマウスなど)の胚に導入します。

これがうまくいくと、キメラ(毛の色がぶちになっていることで判断できる)ができます。

ES細胞は全能性を持っているので、キメラマウスの体内で、うまいことES 細胞が生殖細胞に分化していれば、生まれてくるマウスの中にノックアウトされたゲノムをもつものが出てきます(全身がES細胞由来なので宿主系統とは毛の色が違う、この状態ではノックアウト遺伝子はヘテロ接合)。

キメラがとれたとしても、生殖細胞ES細胞が行ってくれるかどうかは、これも確率の問題で、ノックアウトマウスが生まれてこないこともあります。

http://www.natureasia.com/campaign/genome_trial/timeline/mouse17.htmlによると
1987-1989に初のノックアウトマウスとある。ノックアウトマウスの誕生から20年か。