プライマリケアって?

「医療政策」入門―医療を動かすための13講

「医療政策」入門―医療を動かすための13講

医療政策入門
p.281

将来の見通しが立てられない医学部生、疲弊する医療従事者のモチベーションをアップさせるために、今、どのようなことをすべきなのでしょう。

日野原:医学生は卒業してから研修医になるところまではわかっていても、10年後にどういうポジションで、いくらもらえるのかがまったく見えない。ボスが変わると環境がガラリと変わるからです。
米国では、ボスが環境をつくるのではなく、すべてが制度として決められています。5年後にはどういう手技ができるようになっていて、地位がどう変わると丘陵をいくらもらえるかもわかるのです、日本でも最低限は将来を見通せる状態にしてあげないとモチベーションは維持できないでしょう。同様に、開業した場合にはいくら投資をすると、どれほどのインカムが見込める−などのデータも公表し、医師が進む道を安心して選択できるようにすべきですね。
また、教育スタッフが少ないので、医学生が十分に学べる環境にない。国家には何かしらの援助を望みます。


勤務医から「開業医は信頼できない。開業医はすぐに患者を病院へ送る」という話を聞きます。もし本当ならば、ゲートキーパー機能が働くはずもなく、医療は成り立ちません。どうお考えでしょう。

日野原:今は、開業医にゲートキーパーとしての意識がほとんどありません。将来的には、すべての医師に幅広いスクリーニング能力をつけてもらうようにすべきでしょう。医学生時代に意識付けをして、誰もがプライマリ・ケアをできるようにする。それは難しくないはずですし、諸外国でもそうしていることが多いのです。

「医師になってどうする!」より

病院に必要なのは、経営者でもベテランで優秀な医師でもない。単価の安い医師である。若い医師や文句を言わずサービス残業する医師である。誇りを持った上質な医師を多く作りたいのではなくて、医療費の増額を最小限にできるような底辺医師を増やして、安くこき使いたいだけである。規制緩和と市場競争がもたらあすものは格差と競争である。医師増員の政策には、そうした裏があることに気付かなければならない。

「研修医は何を考え、どうすべきか?」の項でも述べたが、プライマリ・ケア推進の方向付けを見た場合に、裏を返せばそれは専門医療の軽視ということでもある。その背景には、高邁な理念と相反する医療費抑制政策の陰が見え隠れする。患者の生死に直結するような高度先進医療を抑制すれば、医療費を抑制できるからである。日本の医療の現実を十分に説明することなく、「すべての医師にプライマリ・ケアを」という理念を掲げればどのような事態を招くか。おそらく多くの国民は、一人の医師が多様な患者のニーズすべてに対応できるし、そうすべきだと感じるであろう。しかしながら、これは不可能であり、このような前提で医療制度を構築している国はない。世界のどこにも存在しない医療制度を理想として国民に提示すれば、期待と現実とのギャップはますます開く。そして、医療不信や医療訴訟などのトラブルの温床となっていく。

人によって「プライマリケアができる」をどんなものだと定義するのかが違う→外国の話も共有できない、また教育を受けた年代によって国家試験範囲も多くなっているから感じることが違う。

医学部の教育でも「○○科はこんなことします」って話はいっぱい聞くけど、プライマリケアってどんなのかは誰も教えない。誰も知らないからか。