ワクチンの話

どうもアメリカと日本では接種するワクチンがだいぶ違うようだということに、インフルエンザの勉強を始めてから気付いていたが、自分で文献をあたって調べる前に、神戸大学の岩田先生がMRICに流してくださっていたので、転載したい。

アメリカにあって日本にないもの>
帯状疱疹ワクチン、ロタウイルスワクチン、髄膜炎菌ワクチン、不活化ポリオワクチン、青少年層向け百日咳ワクチン(Tdap)

<任意接種であるもの>

B型肝炎ワクチン、インフルエンザ菌ワクチン(Hib)、水痘ワクチン、肺炎球菌ワクチン(23価)

<日本で定期接種であるもの>

生ワクチン
   BCG
   ポリオ
   麻疹風疹混合(MR)
   麻 疹(はしか)
   風 疹
不活化ワクチン
   DPT/DT
   日本脳炎
   インフルエンザ(65歳以上、一部、60-64歳の対象者)

<日本で任意接種であるもの>
生ワクチン
   流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
   水 痘
   黄 熱
不活化ワクチン
   B型肝炎
   インフルエンザ
   破傷風トキソイド
   ジフテリアトキソイド
   A型肝炎
   狂犬病
   コレラ
   肺炎球菌
   ワイル病秋やみ
   b型インフルエンザ菌(Hib)


▽ 必要なのは、日本版ACIP(JCIP)! 1▽
          日本の予防接種をよくする ために

                   岩田健太郎
                   神戸大学病院感染症内科

         2009年11月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

日本の予防接種には定期接種と任意接種の2種類があります。し かし、このよ
うな奇妙な二重構造を持つ国の方が少数派です。無料で市町 村が管轄する定期
接種と、全額自費負担の任意接種。これを「前提」としているところに、日本の
予防接種行政の弱さがあります。前政権 では桝添大臣が「予防接種法改正」を
公言していました。問題の本質を捉えていたからでしょう。民主党政権が、この
動きにどう応えるか、 注目しています。

米国の推奨は、小児(6歳まで)、青少年(7-18歳)、成 人(18歳以上)と分
けられていますが、カバーしている予防接種の 数が全然違います。帯状疱疹
クチン、ロタウイルスワクチン、髄膜炎菌 ワクチン、不活化ポリオワクチン
青少年層向け百日咳ワクチン(Tdap) が日本にはありません。日本では、子宮頚
癌など多くの癌の原因となるパピローマウイルスのワクチンや7価の肺炎球菌ワ
クチンも最近承認 されたばかりです。

 たとえ日本にあったとしても、B型肝炎ワクチン、インフルエンザ菌ワクチ
ン(Hib)、水痘ワクチン、肺炎球菌ワクチン(23価)などは任意接種で有料(全
額自己負担)となります。これらは米国では一定 の対象者に無料で提供されま
す。65歳以上の高齢者に推奨される肺炎球菌ワクチン。アメリカの65歳以上の
高齢者の70%は肺炎球菌ワクチンを接種していますが、日本のそれはわずか
5%程度です(萬有製 薬資料による)。

 我が国の予防接種の承認は、メーカーの申請、PMDA(独立行政法人、医
薬品医療機器総合機構)生物系審査部生物製剤分野の審査、厚生労働省血液対
策課の審査、そして承認というプロセスを経ます。しかし、その経過は不透明で
あり、どのような経緯をたどっているのかは関係者以外 には分かりにくいです。
また、あくまでもメーカーによる申請が主体なので、日本にどのような予防接
種が必要なのか、そのビジョンを提示することはありません。他の予防接種との
関係性などはほぼ皆無です。定期予防 接種への採用に至っては、ほとんどルー
ルがありません。血液対策課の官 僚に何度かこの件を相談したことがあります
が、「国民のニーズがないからうちでは何もできない」としらっと言われます。

 要するに、彼らにはこの国の予防接種をこうしたい、予防接種で日本では○
○という病気をなくしたい、○○という病気で亡くなる人をなくしたい、といっ
た「ビジョン」「プリンシプル」を欠いているのです。これは、プロの仕事とは
言えません。私は日本の官僚の勤勉さと頭脳明晰 なことは世界でもトップクラ
スだと今でも思いますが、それにもかかわらず彼らへの評価が低いのは、そのた
めです。