肺炎

呼吸器診療スキルアップ

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肺炎の診断は通常容易であり、発熱などの炎症症状を有し、胸部X線写真上、浸潤影を呈していたならば臨床的に診断される。しかしながら、胸部X線写真上、肺炎類似の浸潤影を呈するものには以下のようなものがあり、これらの鑑別を行うことが必要になる。



肺炎様の浸潤影を呈する疾患
 心不全
 好酸球性肺炎
 COP (cryptogenic organizing pneumonia)
 肺癌(特に気管支肺胞上皮癌)
 肺リンパ腫
 薬剤性肺炎


肺炎の治療を開始するときに、原因微生物が判明していることはまれである。通常、細菌の培養には数日を要するし、血清抗体検査は回復期血清でないと抗体上昇が認められない。そのため肺炎の初期治療はエンピリック治療で始めることが多い。実際、原因が判明していなくても抗菌薬はある程度の幅の抗菌スペクトラムを有しているので治療は可能であるし、原因微生物の判明の有無にかかわらず、市中肺炎の転帰は不変であるとの報告もみられる。では、なぜ原因微生物を検索する必要があるのかと考えてみると、
・原因菌が判明すれば、それにあった狭いスペクトラムの安価な抗菌薬の選択が可能となる。そのことにより広域スペクトラムの薬剤の使用を制限でき耐性化を防ぎ医療費も抑制できる。
・原因菌が検出されえれば薬剤感受性試験が可能となる。
・エンピリック治療を行ううえでのデータを集積できる。

肺炎球菌とレジオネラ菌について尿中抗原検出法がある。感度も特異度もわりといい。



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海外のガイドラインでは、市中肺炎の原因微生物、特に非定型病原体の頻度が各年齢層において変わらないこと、非定型肺炎と細菌性肺炎は臨床像や胸部X線写真上の鑑別が難しいこと、両者の合併もしばしば認められること、マクロライドを選択すれば両方カバーできることなどの理由により、両者の鑑別を行っていない。

しかしながら、肺炎球菌性肺炎の多くは臨床的にはβラクタムで治療が可能なこと、またわが国においては、マイコプラズマ肺炎は若年者に多く認められること、肺炎球菌のマクロライド耐性が欧米より高度であることなどを考慮して、日本呼吸器学会ガイドラインでは両者の鑑別を行うことを原則としている。


この診断基準を用いても、非定型肺炎と細菌性肺炎の鑑別が困難なことはしばしば認められる。一般に高齢者の肺炎は非典型的であることが多く、若年者に比べて鑑別しにくい例がある。また肺炎クラミジア肺炎は細菌性肺炎との混合感染が効率で認められ、このような場合、臨床的には細菌性肺炎の像を呈することが多く、またβラクタム単独で有効なことも多い。

日本呼吸器学会のガイドラインによる鑑別点は、若年者の典型的なマイコプラズマ肺炎を診断すること、

と割り切ったほうがよいかもしれない。
鑑別を行って抗菌薬の投与を行っても改善の認められない場合には、別系統の薬剤の投与も検討すべきであろうし、症例によっては併用療法を考慮する必要があるかもしれない。



??胸部X線写真で肺炎の原因菌を推定できるか?
多くの場合はNoである。

ただ例外は大葉性肺炎を呈する場合・

 肺炎球菌、肺炎桿菌、レジオネラ
マイコプラズマもときには



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エンピリック治療の場合は、細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別を行うが、高齢者や鑑別困難な例ではβラクタムにマクロライドかテトラサイクリンを加える or フルオロキノロンの投与を考慮する。
重症例の場合は、必ず細菌性肺炎と非定型肺炎の両者をカバーすることが原則であるが、嫌気性菌や緑膿菌、レジオネラなどの関与も考慮する必要がある。
途中でわかったらde-escalationする。


市中感染症診療の考え方と進め方
p.22
「今の治療で効いているから」
「培養結果以外の微生物が原因の可能性もある」
「セフトリアキソンなら1日1回でよいのに、ペニシリンGに変更したら投与回数が増えるので業務が増える」

「広域スペクトラムの抗菌薬の使用継続がより高度耐性菌を誘導する」
「良質な検体が採取できれば培養結果を信頼する」
「患者の最適な治療には投与回数が増えたほうがよい」


血液培養が陰性の場合は、市中肺炎なら7-10日程度で治療は完了する。
陽性だった場合は(大体20%だったはず)、10-14日間


5日目に食欲出てきた、CRPが陰性化した →でもまだやめない
10日経ってもX線が改善しない、CPRが下がらない→でももう十分なはず


 なぜなら、それらは治療効果判定に使うものではないから。