妥当な治療戦略とは

感染症外来の帰還

感染症外来の帰還

妥当な診療戦略は、常に「何を目的にして」という目的に照らし合わせた判断を行うことにあります。形骸化、マニュアル化すると、「点滴か、そうでないのか」という不毛な二者対立を生んでしまいます。点滴が患者を安心させるという目的を達成させるのならば、そしてその目的を「目指す」のならばそうればよく、もし目指さないのであれば、あるいは診療所内のアウトブレイクを避けるという目的を優先させるのなら点滴はできるだけ避ければよいのです。
どっちかに決める必要はなく、これは治療態度とか「私ならこうする」という判断ではなく、「どっちが得か」「私は何を目的にしているのか、今」という判断なのです。

疾患の診断でキーとなるのは詳細な病歴聴取です。
どんな小さな情報だって、診断の手がかりとなるかもしれません。って、まるでベテラン刑事の台詞みたいですね。でも、本当にそうなのです。とくに感染症ではそうです。

正直、急性白血病などの血液疾患の多く、甲状腺機能低下症、多くの結合組織病は、病歴よりも検査のほうが大切です。だから、病歴至上主義になるのではなく、適切、健全な検査の運用は大切なのです。また、昔は脳梗塞脳出血を区別するのに延々と身体所見の微妙な違いを訓練したそうですが、何の役にも立ちませんでした。CTという検査が出てすべてがチャラにしてしまったのです。ですから、多くの疾患において検査は有用です。

しかし、感染症においては病歴のほうが検査よりも優先されます。

病歴聴取は患者からこちらのほしい情報を手にいれ、ストーリーを作ることです。ストーリーがアセスメントをもたらしてくれます。しかし単に細切れの情報を手に入れるだけではアセスメントはできません。病歴聴取を儀式としてやると失敗します。断片的な情報の塊ができるだけです。

患者に時間をかければよい医療、というのは一部の医療者と厚生労働省の「エゴ」にすぎません。