「村上龍×経済人4 新時代の経営:景気回復に依存しない」まえがきより

スズキ自動車がインドと交渉をはじめたときは、ほとんどニュースにならず、注目する人は誰もいなかった。生き残りをかける闘いは、そうやって静かに、必ず目立たない形ではじまる。現代においては、恐竜が支配した白亜紀に生態系のすき間で生きのび、その後中心に躍り出た哺乳類のように、産業界の隙間で生きのびて、ニッチ市場を開拓しなければ勝てない。しかも重要で優先されるのは、あくまで「生きのびる」ということであって、勝利者になろうとすることではない。

 この巻に収められたすべての企業・会社・学校は、例外なく、まず「生きのびよう」とした。儲けようとか、事業を拡大しようとか、その業界のトップになろうとか、そんなことはまったく考えなかった。だが、生きのびるためには利益を出す必要がある。たとえば日本理化学工業は、雇っている知的障害者と「ともに生きる」ためには利益は必須のものだった。フェアトレードによって結果的に途上国の人々を幸福にしようとするピープルツリーにも利益は不可欠だった。また、革命的な経営の眼鏡21がやったことは、非常にシンプルだった。一人がみんなのために働き、みんなが一人を支えるような、そんなシステムを作り上げたのだ。


 キーワードは、合理性とヒューマニズムだと思う。ヒューマニズムから出発して、合理性を手に入れること。そのどちらが欠けても、景気回復に依存しない新時代の経営は生まれようがない。

医者が必要であるもののために資金調達からやるのであれば、「合理性とヒューマニズム」の追求はできるのだろうか?
実際のところ医療は国みたいな大きなものがお金を調達してこないと成り立たない現実で、政策を考える人は何をすべきか?
このキーワードは忘れずにいようと思う。
何せヒューマニズムは医療にとってすごく大切なものに違いないのだし。
それが働く人の中でなくなっては本末転倒だ。なくならないようにどうすればよいか必死に考えなくてはならない。