研究者

11/4のMRICより

鈴木副大臣の考えている手法とは何だろう。そう思いながらメモを取っていた
ら、突然「全国に高校球児は何人いると思うか」という言葉が出てきた。簡便に
計算してみても10万人以上はいそうだが、それが一体どうしたというのだろう。

「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で日本が世界一になれたのを、たまたまと考えるか、一定の確率で起こりうることと考えるか。野球の場合は世界一になっても誰もまぐれだとは思わない。それは、それだけのピラミッドの裾野があって、年齢が上がるとともに数が絞られていく、その頂点にあの代表がいるからだ。

 科学研究にも、このような高校生段階で10万人ほどの候補生がいるようなピラミッド構造を作ることが必要でないか。これまでの科学振興予算は、そのピラミッド構造を考えることなしに、思いつきでバラバラに付けられていた。このために継続性がなく、ポスドクが大量にあふれるような状況になってしまった。各年齢層ごとに切れ目なく予算を投入し、年齢が上がるごとに支える人数を選抜をかけて徐々に減らしていく。ドロップアウトした人は、プロデュースするとか伝えるとか支える側に回る、そんな仕組みを作り上げたい。科学技術の場合、WBCだけが突然あるようなものなので、甲子園やインターハイにあたるものも必要だろう。既に来年度予算にある程度の要求はしていて、再来年度要求で一通りの道具立てがそろうような時間軸で考えている。

何かどっかで読んだ話を急に思い出した。
『研究者の世界は「プロとアマが入り混じった世界」。「プロ」たるための努力をしなくてはいけない。』

で、結局のところ科学者っていうのは日本では「余っている」んだろうか?
大学の理系の学部を出て、「企業の研究職」なり「大学の研究者」になるには、たいてい大学院まで行く。一流でやる覚悟の人もいるし、とりあえずの人もいる。迷いながらの人もいる。「99%の基礎研究は役に立たない」中、どうしてみんな研究の場にいることを選ぶのか?居場所があるから?とりあえず目の前のことをやればいいから?1%の大きなものを夢見るから?意外と食っていけるから?

鈴木副大臣は「まあ惰性でやってきちゃった研究者はいらないよね、しっかりした競争の仕組みをつくろうよ。研究者としてイマイチな人は、もっと力を生かせるポストに変えよう」と言っているようだ。

http://www.bioreg.kyushu-u.ac.jp/saibou/freq_q.html

医学は基礎理論探求と応用学問(=臨床)という2つの側面を持っており、当然前者は未来の医学の基礎となるべく、10〜20年後の医学を模索して行われるもので、逆に後者は現在苦しんでいる人々に対して今までの知識の蓄積を基に医療サービスを施すのがその役目です。つまり基礎研究は「未来のための医学」、臨床は「現在のための医学」です。では旧帝国大学であり、大学院重点化を受けている九大医学部としては、基礎研究と応用開発のどちらがより社会からの要請が大きいのでしょうか?

それは基礎研究だと私は考えます。何故なら応用開発(=臨床)は臨床医養成に重点を置いたF私大やK私大でもできるからです。私はA国立大学を卒業して、その後B私立大学で臨床研修を受けました。そのとき実感したのは、B私大の方が、A国大よりもはるかにレベルの高い医療サービスを施していたということです。これは私にとって非常な驚きでした。確かに頭脳のレベルはA国大の方が勝っていることは事実でしたが、実際の臨床というものはそれだけじゃないんだということがわかりました。もちろん九大の頭のいい医者でも十分にいい臨床をできると思いますが、それは松井選手にサッカーをやらせたり、中田選手に野球をさせたりするようなものです。はたから見ていて非常にもったいないでしょう?つまり私の言いたいことは、九大卒業生は、それなりの頭脳を持った人でなくてはできない、独創的で未来を拓く原動力となるような基礎研究の道を歩むべきだと信じています。理想的には上位20〜30%の学生は基礎医学研究を目指すべきです。

しかしながら現状はいかがでしょうか?全卒業生の中で基礎研究者を目指す人はほぼゼロに近いというお寒い状態です。

九州大学教授の中山先生のホームページに書いてあること。
「もっと医学部出身の研究者を増やすべきだ!」
「医学部生は基礎と臨床の2つの進路を選択することを考えるべし。」

医学部のカリキュラムで習うことは、臨床的なことが大半。「基礎的なこと」、分子生物学、遺伝学、生化学、生理学であったりといったことは、のちのち人体の病気を理解する上で必要だから勉強させるっていうスタンスの大学がほとんどなのではないか?5,6年生で学ぶことは、いかに患者を診れるようになるか?を実習で学ぶわけだ。
医学部生も、ある種社会に出る前の「モラトリアム」を過ごしている一面があり(それは必要だと思うけど)、臨床医学基礎医学両方をかじることは必要なのだが。。
ただでさえ6年間の学部生活。医学部出身の大学院生のアドバンテージは?そして「社会」から普通の生物系の学部出身者ではなく医学部生が研究者に進むことのニーズはどれほどか?