http://www.shinchosha.co.jp/foresight/web_kikaku/u127.html

グーグルの達成は、科学者が「知性の研究」に対してどういう態度を取るべきかについてシリアスな問題提起をしている、と茂木は言う。十年以上前、当該分野の研究者たちは、「人間の知能」と比べ遥かに単純なことしかできない「コンピュータの人工知能」の研究の先に「人間の知能」が生まれるようなことはなかろうと、そういう研究方向に見切りをつけた。でもグーグルは「とにかくやれることは全部やる」という姿勢で、人間の脳とはぜんぜん違うシンプルな原理に基づきながら、安価になったコンピュータ資源を無尽蔵に並べ、「世界中の情報をすべて整理し尽くす」というゴールを掲げ、既にあれだけのものを作り上げてしまった。
 我々科学者の「ロマンティックな研究態度」が脅(おびや)かされているんだ、いやもう敗れてしまったのではないか。「トンボのように飛ぶ」にはどうしたらいいかを科学者は未だに解明できないが、遥か昔に飛行機を発明し、人類は飛行機会を得た。それと同じことが今「知性の研究」の分野で起きつつあるんだ。お前たち、ロマンティックな研究をいくらやっていても「グーグル的なもの」に負けるぞ、時代はもう変わったんじゃないのか。茂木は若い研究者・学生たちをこうアジった。「ロマンティックな研究態度」とは、物事の原理を理論的に美しく解明したいと考える立場のことである。
 グーグル登場の意味を主にビジネス面からずっと見つめてきた私にとって、最先端をいく第一線の科学者たちが、こういう観点からグーグルに衝撃を受けているという事実が、逆にとても新鮮だった。

一体何が科学の残された課題なのか?もはや「単純作業」しかないのか?実験上のちょっとした工夫であったり、論文を出すのに必要なステップを考えたりすること。観察とか手技とか。もはや「労働」と化すのか?