齋藤孝氏の本を気がついたらもう10冊弱読んでいる気がする。
本を出すスピード(というか頻度?)は、業界の中でも早いほうに入るであろう。著作一覧みたいなものをみるとかなりの数に上る。ある分野に秀でた人は他の人に真似できないスピード感をもち、量でも圧倒できるというのは確かだ。氏の新しい本が書店に並ぶたびにそう思う。

本を出すということは、氏自身の考えを広げる作業でもあるし、氏の本に使われる素材(文学作品であることが多いが)は使い回しでないので、氏の勉強熱心なのにはよく感心する。

ただ、氏のイメージはなんとなく、あるレヴェル以上の数学の類題を早いテンポで解いている姿と重なる。数学の問題を解くよりも本を書いていくことのほうがずっと大変だし、クリエイティブなことだというのはもちろんだ。けなすつもりなど毛頭ない。齋藤氏が根底に持っている考え、すなわち身体論、上達論をいろんな形で表現している(だけな←言葉は悪いが… )のかなあという感じなのだ。さきの数学の例はあまりよくないかもしれない。本場のフランス料理をみっちり学んで帰ってきたシェフが、それをもとに創作料理をどんどん作る感じといったほうが、語感としてもイメージとしても正しいかもしれない。

「勝っているときはやり方を変えたりするな!」というのは確か「座右の諭吉」に齋藤氏が書いていた気がするが、まさにこれに忠実にどんどん仕事をこなしているのであろう。逆にどんどん書いていかないと、「遅れ」こそが負けになってしまうという緊張感を持っていらっしゃるのかもしれない。いずれにせよ、「他の人にはできないよね」という速さで仕事をする力というのは見習いたいものだ。