Q熱はリケッチアの一種Coxiella burnetii による感染症
オーストラリアで発見されて以来、世界中でQ 熱の患者が報告され、広く認識されるようになった。本菌は感染動物の尿、糞、乳汁などに排泄され、環境を汚染する。ヒトは主にこの汚染された環境中の粉塵やエアロゾールを吸入し、感染する。ウシやヒツジの未殺菌の乳製品・生肉などを摂食し感染することもあるが、稀である。
 感染源はおもに家畜や愛玩動物であるが、自然界では多くの動物やダニが保菌しており、感染源となりうる。感染動物は症状がない(不顕性感染)ことが多いが、妊娠しているウシやヒツジが感染すると流産や死産をおこすこともある。これは、本菌が胎盤で爆発的に増殖するためである。このため、菌を大量に含む胎盤や羊水が原因となったヒトの集団感染が数多く報告されている。また、ネコの出産や流産時のヒトの感染も多い。一方で、ヒトからヒトへの感染はほとんどおこらない。



チフスとは、高熱や発疹を伴う細菌感染症の一種で、広義(あるいは古い定義)には下記の三種の総称。

1.サルモネラの一種であるチフス菌 (Salmonella enterica serovar Typhi) の感染によって発症する腸チフス
2.パラチフス菌 (Salmonella enterica serovar Paratyphi A) の感染によって発症するパラチフス
3.発疹チフスリケッチア (Rickettsia prowazekii) の感染によって発症する発疹チフス これはlouse-borne


チフスという名称はもともと、発疹チフスのときに見られる高熱による昏睡状態のことを、ヒポクラテスが「ぼんやりした、煙がかかった」を意味するギリシア語 typhus と書き表したことに由来する。以後、発疹チフスと症状がよく似た腸チフスも同じ疾患として扱われていたが、1836年に W. W. Gerhard が両者の識別を行い、別の疾患として扱われるようになった。


chigger ダニの幼虫

scrub typhus
草原熱
これがツツガムシ mite-borne
miteはダニ (の幼虫)

※ノミはflea


発疹チフス
epidemic typhus

発疹チフス・リケッチア
Rickettsia prowazekii



シラミ媒介性発疹チフス
louse-borne typhus




1980年以後多発しており、届け出患者数は年間約500人である。
発生地域は北海道・沖縄を除く全都道府県に及んでいる。


http://idsc.nih.go.jp/earthquake2011/RiskAssessment/20110401tutugamusi.html
被災地におけるツツガムシ病


http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g1/k02_13/k02_13.html

ツツガムシ病
 ツツガムシ病はOrientia tsutsugamushi を起因菌とするリケッチア症であり、ダニの一種ツツガムシによって媒介される。患者は、汚染地域の草むらなどで、有毒ダニの幼虫に吸着され感染する。発生はダニの幼虫の活動時期と密接に関係するため、季節により消長がみられる。また、かつては山形県秋田県新潟県などで夏季に河川敷で感染する風土病であったが(古典型)、戦後新型ツツガ虫病の出現により北海道、沖縄など一部の地域を除いて全国で発生がみられるようになった。

疫 学


 ツツガムシは一世代に一度だけ、卵から孵化した後の幼虫期に哺乳動物に吸着し、組織液を吸う(図1)。その後は土壌中で昆虫の卵などを摂食して生活する。わが国でリケッチア(以下、菌)を媒介するのは、アカツツガムシ(Leptotrombidium akamushi )、タテツツガムシ(L. scutellare )、およびフトゲツツガムシ(L. pallidum )の3種であり、それぞれのダニの0.1〜3%が菌をもつ有毒ダニである。ヒトはこの有毒ダニに吸着されると感染する。吸着時間は1〜2 日で、ダニから動物への菌の移行にはおよそ6 時間以上が必要である。菌はダニからダニへ経卵感染により受け継がれ、菌をもたないダニ(無毒ダニ)が感染動物に吸着しても菌を獲得できず、有毒ダニにならない。したがって、自然界でげっ歯類などの動物はヒトへの感染増幅動物とはならず、ダニのライフサイクルを完結させるために重要となる。
 新型ツツガムシ病を媒介するタテツツガムシ、およびフトゲツツガムシは秋〜初冬に孵化するので、この時期に関東〜九州地方を中心に多くの発生がみられる(図2)。また、フトゲツツガムシは寒冷な気候に抵抗
性であるので、その一部が越冬し、融雪とともに活動を再開するため、東北・北陸地方では春〜初夏にも発生がみられ、そこではこの時期の方が秋〜初冬より患者が多い。したがって全国でみると、年間に春〜初夏、および秋〜初冬の2 つの発生ピークがみられる。また、古典型ツツガムシ病の原因となったアカツツガムシは現在消滅したと考えられ、夏期に発生ピークはみられない