分子生物学講義中継 0巻 by 井出利憲

p.376

共役二重結合をもった分子には当然のことだが、生体成分としては、脂質・糖などを見てもわかるように、紫外線を吸収するものは少ないので、核酸が紫外線を吸収するというのは特徴的なことである。核酸以外では、タンパク質はチロシンフェニルアラニンなどの芳香族アミノ酸があるので、紫外部吸収がある。
 吸収曲線の形は塩基の形によって違いがあるが、だいたい260 nm付近に最大吸収がある。核酸定量する際に、水溶液の260 nmの吸収を測ることで概略の濃度がわかる。正確には、塩基組成によっておなじ量の核酸でも吸収の大きさに差がある。2本鎖DNAは、塩基同士が水素結合しているため構造が固定され、塩基の共鳴状態の自由度が減るため、同じDNA量で比べたとき、一本鎖DNAよりも吸収が小さい。
タンパク質の紫外部吸収曲線は、全体として長波長側にずれている。よってタンパク質の混入があると、最大吸収が280 nm方向にずれる。

p.437
DNA合成では、普通のRNA合成酵素とは異なる、primaseというRNA合成酵素が働いてRNA primerができる。数塩基から10塩基程度 その先にDNAポリメラーゼが働く。

p.448
DNAの二本鎖のうち、RNA合成の鋳型になる鎖に対する相補鎖のことをセンス鎖という。センス鎖はRNAの非相補鎖である。センス鎖は、遺伝子部分についてDNAの配列のTをUに換えると、そのままRNAの塩基配列にある。
※DNAの二本鎖のうち、どちらがセンス鎖であるかはDNAの全長にわたって決まっているわけではない。遺伝子によって、どちらの鎖がセンス鎖になるかが決まっている。
 DNA上をRNA合成酵素がどちら向きに走ってRNA合成するかも、遺伝子ごとに決まっている。

RNA合成の最初の塩基を1番とする。0番はない!

RNA合成酵素がDNAに結合する部位がプロモーター
どのプロモーターにうも見られる共通性の高い配列、すなわちコンセンサス配列(consennsus sequence)がある。RNA合成開始の-10と-35付近にある。-10付近の配列をプリブナウボックス(Pribnow box)とよぶ。-35付近から-10あたりまでをコアプロモーターという。

このさらに上流の-40から-60にかけて、アップエレメントと称する転写活性化部位もある。ここまでを含む広い範囲を拡張プロモーターという。


DNA上のプロモーターの塩基配列が、RNA合成酵素が結合する場所と方向を決め、その結果、鋳型として使うDNA鎖が決まることになる。